カテゴリー:サイエンス小ネタ
2010.6.14
「はやぶさ」と『おとうさんのちず』
昨日(6/13)の深夜は、小惑星探査機「はやぶさ」帰還の話題に釘付けでした。
打ち上げから7年、今までの経緯を動画で辿っては涙し(いろいろあるけど、『イトカワをねらえ!』がわかりやすいかも)、「はやぶさ」に地球を見せてあげたいから大気圏突入の瞬間に写真を撮らせることにしたという話にも涙。そして、実際に撮られた写真を見た瞬間は号泣でした・・・。
本当にすばらしいプロジェクトだったと思います。
そして、次に待たれるのは「はやぶさ」が満身創痍で届けた、小惑星「イトカワ」の砂が入っているかもしれないカプセルの回収と分析です。この砂、ただの「宇宙に浮いた石っころのかけら」ではありません。もしかしたら、太陽系誕生や生命誕生の謎を明かしてくれる可能性を秘めているかもしれないのです。期待が高まります!
ここで、「はやぶさ」とは関係ないのですが、思い出したものがあります。ユリ・シュルヴィッツ(Uri Shulevitz)作の『おとうさんのちず』という絵本です。
あるひの こと
おとうさんは いちばに パンを かいに いきました。
ところが ゆうがたに なっても もどりません。
おかあさんと ぼくは しんぱいになり おなかも すいてきました。
ほとんど まっくらに なって、ようやく かえってきました。
おとうさんは わきに かみを まいた ながい つつを かかえていました。
「ちずを かったよ」 おとうさんは ほこらしげに いいました。Tomoki Yamabayashi=抜粋訳
この作品は日本では、さくま ゆみこ氏の訳で『おとうさんのちず』として出版されていますが、ここでは私のパートナーの訳を紹介させていただきました。
この本は「絵本ナビ」のサイトでは次のように紹介されています。
作者の、画家として歩み始める原点を描いた自伝絵本。戦争で故郷を追われ、過酷な暮らしをしていた時期、父親の持ち帰った世界地図が少年だった作者にパン以上のものを与えた。
今、手元に絵本がないので、詳細についてお話することはできませんが、少年にとって、文字通り「世界」が広がったのです。
「はやぶさ」に話を戻します。
カプセルの中に入っているものは、もしかしたら私達人類にとっての「おとうさんのちず」かもしれない、と思ったのです。
今、世界の国々の宇宙開発は、金銭的に厳しい状況だと思われます。日本でも、例の事業仕分けの対象となっていたはず。それでも、一度プロジェクトの中止が発表されたハッブル宇宙望遠鏡も人々の熱意により継続が決まり、新しい発見のニュースが伝わってきています。
「パン」が大切なのもわかります。
でも、こうしてワクワクできることだって、大切なことだと思うのです。
2007.11.14
くじら
海の中では小さく見えますが
地球上で最も大きい生物
シロナガスクジラは体長30メートル
重さ200トン
恐竜よりも ずっと大きい
舌の重さは象1頭分
心臓は自動車並み
血管の太さは 中で人が泳げるほど
尾ヒレは小型飛行機の翼ぐらいあります
『THE BLUE PLANET』冒頭より
* * *
この偉大な生き物が
実は地球上すべての生命のメタ意識を支える存在だった、
そんな空想をしていたのは何という物語だったでしょうか
ひょっとしたら?
フとそう思わせてしまうくらい、
大きくて不思議な存在
* * *
「ねぇ、さっき笑っていたの?」
そんな私の問いかけに、
気づいているんだか、いないんだか
きっと気づいていないよね
私だって、蟻んこに話しかけられても気づかないと思うし
そんなこと、どうでもいいだろ?
そう言ってるみたいに「ぷしゅ」と潮を噴いた後、
振り返りざまに「にっ」と笑って
青い海に溶けていった
2007.3.18
「地球が自転するの見に来られたし」
『フーコーの振り子』を読みました。
と言っても、ウンベルト・エーコの大作ではなく、アミール・D. アクゼルによるレオン・フーコー自身についての本の方。
エーコ版はずいぶん昔に読んで、かなり面白かった記憶があります。でも、再読するのは覚悟がいりそうです。
それはさておき。
今回読んだ『フーコーの振り子』も面白かった!ほぼ1日で一気に読了してしまいました。近代史や科学史に詳しい方にはそれほど目新し内容ではないのかもしれませんが。
レオン・フーコー(1819年9月18日-1868年2月11日)
振り子を使って地球が自転していることを証明した。
こんな教科書に載ってそうな説明だけでは見えてこない、その偉業に至までの数世紀にもわたる科学者たちの苦難や歴史背景が語られているのです。
しかも、かなり読みやすい。
フーコーをとりまく多くの人々、代表的なところではナポレオン三世やフランソワ・アラゴーなどが登場するのですが。まず外堀を埋めていくように、かの人々のそれまでの生き方なり人となりが語られ、自然に本筋であるフーコーの話に編み込まれていく、その語り口が絶妙なのです。自然に読み進めていくことができます。(しかも、「アクゼルさんは、ガリレオ・ガリレイが嫌いなの?」と言ったツっこみを入れたくなるような記述が出てきたり:笑)
フーコーって、実は独学で科学を学んだ人だったんですね。知りませんでした。そのため、排他的で権威的なアカデミーに、なかなか認めてもらえない憂き目にあってきたようです。それでも彼には実験機材を発明する器用さと知識、視野の広い科学についての洞察力、それを分かりやすく表現することのできる文章力という武器がありました。
さて、タイトルの「地球が自転するの見に来られたし」ですが。
これは、ついに振り子よって地球に自転を証明する実験に成功した彼が、フランソワ・アラゴーのバックアップのもと、パリ在住の科学者という科学者に送った公開実験の招待状に記された文なのです。こうして「美しい実験」のための準備は整いました。
『フーコーの振り子?科学を勝利に導いた世紀の大実験 』より
なんともシンプルで美しい実験ではありませんか!
余談ですが「公開実験」って響き、良いですね。未知の世界への好奇心と、期待感と、そして若干の胡散臭さが混在している感じで。