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カテゴリー:夢想と幻想

2008.4.7

時空移動の作用・反作用

時空を移動するには、とてつもないエネルギーが必要だ。

たとえば、砲弾を撃ち出す時を思い出すと良い。

一方向に弾を撃ち出すには、それと同じ力が反対方向にも発生する。それを緩衝させるために砲筒を移動させてエネルギーを吸収させる必要があるのだ。

将来的には、この砲弾と同じ原理で時空移動のエネルギーを吸収させるシステムが開発されるかもしれないが、まだそれができないのが現状だ。

たとえば、自分が未来に行きたい時には過去に向かうエネルギーも同時に発生してしまうのだ。

それでは、どうすれば良いのか?

未来に行きたいのならば、それと同じだけのエネルギーを必要とする過去への移動を求める人を見つけなくてはならない。ある種の運命共同体。

さらに言えば、未来への移動のエネルギーと過去へのエネルギーは同価ではない。

未来の方が負荷が大きくなるのだ。これは、未来は不確定要素を切り抜けた先に存在するから、などという人もいるが、まだ明らかにはされていない。

ともかく、未来に100年移動するのと同じだけのエネルギーで、過去に150年移動することができるのだ。

一つのカプセルに入った2人の人間は「東」と「西」に一気に移動する。

太陽の来た道と進む道へ。

2008.2.8

カラ、コロロ

螺旋階段を昇っていた。
息がきれる。
でも、上までのぼらないと。
鐘の音が鳴り終わる前に。

* * *

自家発電機の油の匂いが鼻をつく。
慣れない鼻緒でつま先が少し痛いけど
石畳の上を歩く音が心地良い。

* * *

窯のフタを開ける時はドキドキした。
折角作った土鈴が割れていたらどうしよう?
大丈夫。
素朴な、綺麗な音がした。

* * *

大昔の人が作った大理石のタテモノ。
今、ころがっていった石の欠片も、
当時はその一部だったのかな?

* * *

トマトは真っ赤に熟れていた。
「食べてごらん。でも、よく洗ってね」
畑のすみにある手動ポンプを
おばあちゃんが動かしてくれた。
冷たい水が勢いよく流れ出した。

2007.12.30

地下室

目の前に一人の男が横たわっている。
死亡して、まだ間もない。
ここでは名前は伏せておくが、かなり名の知られた男だ。

山賊のような風貌をしているが、
もとは身分ある家柄の出だ。

いわゆる義賊、というものだろうか。
ロビン・フッドの再来などと噂されていた。
民にも慕われていた。
その男が死んだ。

* * *

今、主の命を受けて男を蘇生しようとしている。
何か重要な事柄を秘したままの死、といったところだろうか。
詳細は知らされていない。

いずれにせよ、
一介の錬金術師たる私が口を挟む問題ではないことだけは確かだ。

* * *

本当に魂の再生などできるのだろうか。
思いつくかぎりのことをやってみた。

文献に記されていた方法も、すべて試してみた。
「お願いだから、生き返ってくれ・・・」

時間だけが過ぎていく。

* * *

あれから、どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
薄暗い地下室にいては昼も夜もわからない。
男は依然として静かに横たわったまま。
変わったことといえば、
腐敗臭が鼻をつくようになったことだけだ。

* * *

腐敗臭は、ますます酷くなってきた。
それでも、手を休めるわけにはいかない。
吐き気と疲労で、頭がもうろうとしてくる。

* * *

私の中の何かが歪むのを感じた。
「お願いだから、生き返ってくれ・・・」

* * *

頭の中のガラスが割れた。

「お願いだから・・・」

* * *

視界がゆらいだ。

「お願いだ・・・」