色に匂いがある、という感覚。なんとなく、分かるような分からないような。その色から連想されるモノの匂いかな?なんて想像してみたり。
「重色目(かさねいろめ)」という言葉をご存じですか?平安時代ごろに確立された日本独自の配色法です。
私たちが使う色には、それぞれ名前がついています。赤・青・黄色といったシンプルなものから、Faber Castellの色鉛筆につけられた名前のような凝った名称まで。「#ff6633」「C50 M70 Y10 K0」なんて記号を使う場合もあります。
単体の色に名前がついているのは、すでに慣れ親しんでいることなのですが、「重色目」では色の組み合わせ方に名前がついているのです。なんともウツクシイではありませんか!
例えばこれは「紅梅(こうばい)」という重色目。
実際の紅梅の色よりも濃く感じますが、それでも「ああ、梅だなぁ」と感じる組み合わせです。ちなみに図の右側を「表色」、左側を「裏色」と呼んで、衣服の配色に用いていたようです。
そして、これが「紅梅匂(こうばいのにおい)」。
上の色よりも淡い色を用います。淡い色を「匂い」と表現!・・・ウツクシすぎます。私たちのご先祖様方の素晴らしい感覚に脱帽です。手元の辞書にも「匂い:同色の濃淡によるぼかし」と載っています。知りませんでした。
ただし「匂」とという言葉は、同系色の濃色から淡色への変化を表す場合と、表色と裏色の関係を表す場合があるようです。そういえば、紅梅と紅梅匂では濃淡の位置が逆になっていますね。
▼追記ここから
なぜ、いきなりイニシエの色の話を語り出したかというと。今、「かさねいろ?平安の配彩美」という本を読んでいるからなのです。この本、見開きで一つの重色目を紹介するように構成されています。右のページには色の帯、左のページにはその解説とその重色目が引用されている和歌が紹介されています。
解説を読んでも面白いのですが、色の組わせをパラパラと見ていくだけでも楽しい本なのです。色を見ているだけで楽しくなってくる方にはオススメの本。
折角ですから、もう少し組み合わせを紹介していきますね。
こちらは「葉桜(はざくら)」
そいうえば、葉桜を遠くから見るとこんな色をしている気がします。そして、その重色目の衣服を用いる時期も、それぞれ決まっていたようです。「葉桜」の着用時期は春となっていますが、例えば別の季節にうっかり着てしまったりした場合には清少納言さんのような方から「いと、すさまじ」なんて鼻で笑われてしまったりしたんでしょうね。
これは「撫子(なでしこ)」
大和撫子といえば、日本女性を表す言葉として知られていますが、意外とハッキリと主張の強い感じです。実際の日本女性も・・・そうなのか?そうなの?そうなのかも???
そして「葡萄(えびぞめ)」
「ぶどう」と読んでしまいたくなるところを「えびぞめ」と読ませることからして、すでに驚きです。エビカズラという山ブドウの実の色のイメージだとか。
この本に紹介されている、重色目の元となる単体色は48色。今から千年以上も前に、それだけの色を表現して布を染めることのできる技術と材料を持っていたことだけでも驚きです。日本の文化もまだまだ奥が深そうです。
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