絵本ギャラリーの中には「子供の本–イメージの伝承」以外にも「絵本は舞台」「コドモノクニ」「ユーゲントシュティルと絵本画家たち」「江戸絵本とジャポニズム」という4つのコンテンツがあります。これらの4つは美術館風に言うと、企画展のようなものです。それに対して、今回私が制作に参加させていただいた「子供の本–イメージの伝承」の部分は収蔵庫に保管されているものも含めたパーマネント・コレクションと言えるでしょう。
音楽やナレーションの入った「企画展」コンテンツに比べると、無音で淡々としていますが、貴重な昔の絵本や挿絵本のイラスト・データベースとしてはかなり見応えのある内容のものではないでしょうか。
今期分として「子供の本–イメージの伝承」に掲載している作品は1750-1900年ごろのイラストです。1900年以降(1950年ごろまで?)の作品についても、来期以降に追加されていく予定です。
「子供の本–イメージの伝承」で取り上げられている時代は、世界情勢も芸術運動も印刷技術も凄まじい勢いで変化していっていた時代です。それが反映された歴史資料として見ても面白いと思います。
▼追記ここから
なお、今期分として掲載している作品は以下の通りです。
子供の本–イメージの伝承
- 靴ふたつさん
- 四足獣の歴史(トマス・ビュイック 絵)
- 「メアリー・ジョーンズ」と子どもたちの物語集
- 子どもたちの絵本
- 女の子の本
- 霊魂についての子どもの本
- モーゼの発見
- 責任を負うことは大事、又は手に負えないトム
- 陽気なおばさんのお話集 チャールズと犬
- 三段階の雄弁家へのはしご 初級少年篇
- ファニーばあやの子どものためのお話集
- シルバー・レイク物語のための短篇と詩の本
- 子どものための聖書の質問集
- 親指太郎と七リーグぐつ(ジョージ・クルクシャンク 絵)
- 美女と野獣(W・H・スウェイツ 絵)
- 子どものための絵入り初級教科書
- 子どものための算数の教科書
- サンダースの絵入り教科書:初級口語入門書
- 不思議の国のアリス(ジョン・テニエル 絵)
- ラ・フォンテーヌの寓話集 I(ギュスターヴ・ドレ 絵)
- ラ・フォンテーヌの寓話集 II(ギュスターヴ・ドレ 絵)
- おばあさんの少女時代:プルーディの気まぐれシリーズ
- 算数の初級教科書
- メイベル マルタン:収穫の田園詩(メアリ・A・ハロック/ジョン・J・ハーレイ/A・R・ウォード/T・モラン 絵)
- いないいない姫(リチャード・ドイル 絵)
- わらべ唄と遊戯の本(ホンブル・エメリン・M・プランケット 絵)
- 二つのオランダ人形の冒険(フローレンス・K・アプトン 絵)
- ホーン・ブックの歴史 I
- ホーン・ブックの歴史 II
Children’s Picture Books: The Transmission of Images
- Goody Two-Shoes
- A General History of Quadrupeds (Illustrator: Thomas Bewick)
- Mary Jones, and Other Books for Children
- The Children’s Picture Book
- The Girls’ Own Book
- The Child’s Book on the Soul
- The Finding of Moses
- Duty is Safety; or, Troublesome Tom
- Aunty Jaunty’s Tales: Little Charles and His Dog
- The Orator’s Ladder in Three Parts. Part First, The Boy’s Ladder
- Good Aunt Fanny’s Budget of Stories and Legends for Children
- The Budget: The Silver Lake Stories
- The Child’s Scripture Question-Book
- Hop-O’My-Thumb and The Seven-League Boot (Illustrator: George Cruikshank)
- Beauty and the Beast
- The Illustrated Primer
- A Mental Arithmetic, upon The Inductive Plan
- Sanders’ Pictorial Primer: or, an Introduction to “Sanders’ First Reader.”
- Alice’s Adventures in Wonderland (Illustrator: John Tenniel)
- The Fables of La Fontaine Vol.I (Illustrator: Gustave Doré)
- The Fables of La Fontaine Vol.II (Illustrator: Gustave Doré)
- Little Grandmother: Little Prudy’s Flyaway Series
- A Primary Arithmetic
- Mabel Martin: A Harvest Idyl (Illustrator: Mary A. Hallock/John J. Harley/A. R. Waud/T. Moran)
- The Princess Nobody: A Tale of Fairyland (Illustrator: Richard Doyle)
- Merrie Games in Rhyme (Illustrator: Honble Emmeline M. Plunket)
- The Adventures of two Dutch Dolls (Illustrator: Florence K. Upton)
- History of the Horn-Book Vol.I
- History of the Horn-Book Vol.II
* * *
こそっと制作後記:
去年の年末から3月ごろまでにかけて籠って作業していたコンテンツが公開されました。
イラストのデータとして、大きな紙袋2袋分のフォトCD(←デジタルで仕事する人のデータ量の表現としては不適切かも?!(苦笑)でも、40GBくらいあったよーな・・・)を渡された時にはボー然となりました。来る日も来る日も画像をトリミングして(今期分:約2200枚)Flashに取り込んでいく作業は・・・。キツかったぁ。
ヘヴィ・ルーチンの連続で、マウス持つ右手の感覚がなくなってきたもんなぁ。(^_^;
冷蔵庫から牛乳を出そうとして、手に力が入らず、パックを「ぽと」っと落としてしまった時には「ヤバいぞ、私?」と思いました。(苦笑)
とまぁ、大変だった日々も、こうしてコンテンツが公開されると報われる気持ちです。嬉しいなぁ。
あ、いきなり苦労話をしてしまいましたが、仕事自体はとっても楽しかったんですよ!!
特にプロジェクトの中心となる島多代先生のお宅での打ち合わせは、かなり面白い話が聞けて刺激的でした。その内容については、またいつか語るかもしれません。それとプロジェクトをとりまとめてくださった北村礼明さんには何度助けてもらったことか・・・。細かいことでもいろいろ相談に乗ってくださって、本当に心強かったです。ありがとうございました。
* * *
コンテンツのデザイン・モチーフは、「なんとなく1910年ごろの雰囲気」を目指してみました。幾何学的に嗜好が向きつつも装飾的ものを切り捨てきれていない、というあたり。特にお手本があるワケではなく、直感です。
色調は、メインであるイラストレーションにケンカを売らないように(笑)、ニュートラルにまとめてみました。来期以降に追加される作品としては、カラフルなイラストもたくさん登場するのですが、まだ今期のものは単色のものも多いし、本当に小さな挿絵(元図の都合上、画面いっぱいに表示できていないものがあります)もあるので、それらが引き立つように心がけています。
イラストの画像についても、古い本の変色した感じを残し、それも収蔵物自体の個性として雰囲気が伝わるようにしています。
インターフェイスについては、館内展示のタッチパネルで操作されるコンテンツをそのままWEBに載せているので、通常のWEBとは違う操作感があると思います。タッチパネル気分でお楽しみいただけると嬉しいです。
来期分として、掲載作品の追加の他にもコンテンツの機能自体も、より楽しく見ていただけるようにバージョンアップしていく予定です。「こんな機能があったらいいな!」というご意見があればよろしくお願い致します。
« Hide It