2005.8.18
指でしゃべる
ローマ近郊にE.U.R.という街があります。読み方は「エウル」。ムッソリーニが万博のために作った、何とも不思議な街なのです。何が不思議かというと、そのスケール感。ローマ帝国への憧れから、通常では考えられないような巨大な建築が立ち並ぶ街を作ってしまったのです。首都郊外にあるオーバースケールの街。日本でいえば、少し幕張に近いかもしれません。
建物内部に入ると、とにかく天井が高いのです。美術館の展示室ならそれもわかるのですが、トイレもそのままの天井高というのがちょっと笑えました。ブースは2m角の、日本でいうところの身障者用並みの広さがあったとはいえ、その天井高は3層吹き抜け並みに、ゆうに10m近くありました。信じられない!(笑)
街は閑散とした雰囲気でした。私が訪れたのが初冬であったからかもしれません。大きなアリーナがあったので、イベントがある時には大勢の人がつめかけることもあるのでしょう。でも、なんとなくキリコの絵の中に迷いこんだような、不思議な感じでした。
おなかが空いたので、何か食べようとお店を探しました。でも、食べ物屋がほとんどないのです。やっとのことで見つけたのはマクドナルド。地元の人達も、そこしか食べるところがないのか、かなりの人でにぎわっていました。それでも席が見つからないほど混んでいた訳ではありません。早速注文して、席を選びました。
ふと気付くと、私のすぐ近くの席に3人の女性が座ってました。みんな20代後半くらいでしょうか。ちょっとポッチャリ系のほがらかな女性を中心に、おしゃべりに夢中でした。でも、声はしないのです。
恐らく3人は聾唖者の方々なのでしょう。凄い勢いで指を動かしていました。しかも、中心となってしゃべっているポッチャリ系の女性は、さらにハンバーガーをほおばりながら、しゃべり続けているのです。「そうか、彼女たちはものをほおばっていてもしゃべることができるんだなぁ」なんて、妙に感心してみたり。
本当に生き生きとしゃべっていたのです。楽しそうにしゃべっていたんですよ。
【旧 Short Tripより 2003.02.04】